柏 秀樹 OFFICIAL BLOG
ヒデキの部屋
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ひとりごと…
邂逅はコウカイだった。
偶然に出会うことを邂逅というけれど、昨日のインタビューも、まさに邂逅だったと思う。ジャーナリストだから私が取材することが大半で、取材される側にまわることはあまりない。今回は取材される側だった。取材の方は私よりもひとまわり年が上のMさん。そのMさんとはまさに20年ぶりかなお会いするのは。お元気な様子はMさん執筆の記事を読んでうかがい知っていたのだが、直接にお会いする機会がなかった。当時はある用品メーカーのカタログやバイクメーカーのカタログを製作するデザイナー&ディレクターだったMさんだから、私の家でのインタービューは次から次に話が盛り上がってしまって、特に私が話のテーマから脱線する典型なので、さそがし原稿にまとめるのが大変だと思う。
いろんなカタログを持ち出して、このカタログはあの有名な大先生のガレージで撮影したものなんですよ。このカタログに出ているライダーのシルエット、実は私なんです。なんて調子でインタビューアーが自分の作品の四方山話を展開。もちろんてんこ盛りのコメントで私が応える。時間がドンドンすご〜く早く流れていく。「では、これ、誰かわかりますか?」とMさんに訊かれ、私は「はい、簡単です。元ワークスライダーの○○○之」さんですよね。体型とライディングフォームでわかりますよ。といった業界内での仕事をしていないとわからないようなお話しから、実は世界的に有名だったあの○○○○さんが「カタログ撮影中に転倒しちゃったんですよ」とか「夜通しで、伊豆のあの場所で、このバイクのカタログ撮影のライダー」をやったんですよ、と私もその時のエピソードを披露させていただいた。で、今度は私の自慢のカタログのひとつになっているライラック、ラビット、シルバーピジョンといった50年以上前のカタログを披露して、大先輩を相手にライラックと、ラビットとシルバーピジョンの衰退・撤退と関連する事実と私の推測のお話やら、KRSというスクールのコンセプトとか、なんでジャーナリストを始めたの?という質問に答えたり、なんで3気筒のタイガーを選んだの?イマドキのバイクのお話しなど、まさに四方八方にひろがった。
まあ、そんなことになることはお互いに予想していたので先にバイクの撮影を雨が降る前にやっておこうと言うことで、ある場所に行って撮影していただいた。で、そこで私は根っからのお調子者。案の定、事件は起きた。「ここならローアングルで空抜けでも撮れますし、私があそこに降りれば上から俯瞰で撮れますよね」。まさにアウンの呼吸で話がスッとまとまり、まず後ろの背景が綺麗な一般道をパリダカよろしくスタンディングで走り、その後に低いところに降りてゆったり走った。撮影はあっという間に終了した。カタログだと1日かけても撮れないことが多い。ザーザーの雨が理由で晴れ待ちで某H社のバイクのカタログ撮影で3日待つことも経験した。70年代という時代がそれを許した。今はロケすら行かないことがあるし、行ってもあちこち簡単にデジタルで修正。そんなカタログ多いですよね、と嘆いたこともあった。で、改めて上を見上げた。あ〜、まずい。「助けてポ〜パ〜イ」とオリーブが叫ぶ。すると「なんてこったい」と驚くポパイ。そんな心境か。古すぎてわからない人が多いだろうが、アラフィフならわかってよね。で、これを後の祭りというのだろう。降りるための小道が急斜面というのはわかっていたが、上り斜面の途中に20センチばかりの段差があるじゃないの!しかも助走場所はガレた小石・中石ばかり。しかも上がりきるところは草だらけ。つまり、すごく滑りやすい。うーん、しかもタイガーってでかいし、ノーマルタイヤだ。ピッカピカに磨いているし、キズを付けたくないし、倒したら簡単に起こせないことだって考えられる。困った。心臓がバクバクしてきた。近くの友達に電話してみようか。「助けてくれ!」って。やっぱり、アホなんだね私って。一応、嘆く。落ち着いているフリをしてもっと簡単に上がれるところを探したが、上がれそうなところはなかった。つまり、行き止まり。これがオレの人生か。元の場所に戻り、大きく息を吸ってからゆっくり吐いて、イメージトレーニングをして、リヤのトランクを外してタイヤの空気圧を下げて、さあ、行くぞ。ことはあっけなく終了。
この顛末をずっと見ていたMさんと通りがかりのオバチャンやオジサンや小さな子供が思わず拍手!助走時のタイヤ痕すら残さず綺麗に上がることができた。でも、やっぱりお馬鹿なことをやるものではありません、と反省しつつMさんからのインタビューを自宅で受けたという流れ。でも、そんなお馬鹿な私の実態も含めて走ってナンボの私、いろんなドジの経験をしてきたことも現場で見てもらえたのでかえって良かったのかもしれない(ひたすら前向き)。
ありのままの私を見て知って、いろんな経験談といろんな乗り方・ノウハウを読者やスクールに来てくれる方に、お伝えしていく。私は世界や日本の最高峰の速さなんて持っていないけれど、一般のライダーが陥るいろんな罠にひかからないで賢く楽しく成長していくためのジャーナリストでありたいしスクールでありたい。そのノウハウで成長していただく姿を見るのが一番の生き甲斐だとMさんからの最後に質問にこたえた。Mさんは降り始めた雨の中を帰って行った。お互いにすごく喋って疲れて、きっと今日は爆睡モードだ。と思いつつ、やっぱりあの急斜面を思い出した。みなさん、何でも自信過剰はダメですよ。反省!
皆さん、控えめの心意気の中で賢く逞しく、徐々にレベルアップしましょうね。スピードって魔物。難しいことに挑戦するのも周到な準備があってこそ。これってここのテーマを考えると邂逅(カイコウ)じゃなくて後悔(コウカイ)だろうって?はい、その通りです。
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