柏 秀樹 OFFICIAL BLOG
ヒデキの部屋
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ひとりごと…
笑顔で練習がイチバンだね♬
ある日のKRSライディングスクール終了後に、バイクショップへ行き、新型バイクを見てから、4人の受講生と近くのファミリーレストランへ向かった。
バイクショップのメカニックが我々を追いかけてきて「この子がスクールを受けたいそうで」と女子高校生を紹介された。
訊けば、そのバイクショップのガラス越しから、バイクを張り付くように見ていたらしい。それでメカニックが声を掛けたら、現在は単気筒のCB400SSに乗っていて、これから大型免許を取得して、憧れのワインレッドとベージュに塗られたボンネビルに乗りたいのだそうだ。
すぐ近くに家があるようで財布を取りに戻った彼女は「これからライディングスクールをやっている柏さんと食事してくる」と親御さんに話をしたら「えっ?あの柏秀樹さん?」ということで、彼女の父親は私の名前を知っていたらしい。なので、まったく緊張する素振りもなく、笑顔で戻ってきて楽しい食事&トーク時間が始まった。
彼女いわく「同級生の男の子たちは峠道に出掛けては転倒してばかりで怪我が多いんです。一度連れて行ってもらったけど、すごく怖かった!」らしい。
「僕も若い頃は何もわかっていなくて転んだことが何度もある。特に男の子は頑張っちゃうからね。たまたまこうして生きているから、失敗の経験を活かして受講生の皆さんに、安全と楽しさのためのテクニックを独自の方法でお伝えしているんだよ」
「私は飛ばすつもりはないけれど、自由に取り回しやUターンができて、安全に走って、いろんなところへツーリングしてみたいです」
「そうだよね。大好きなバイクで、いつまでも安全に楽しく乗り続けられたら最高だよね。素晴らしい景色だけではなく、いろんな感動にも出合えると良いね」
私のライテクDVDを手に入れた彼女は、両親と一緒にDVDを見てくれたそうだ。そして後日、スクールに来てくれることとなった。
正直、びっくりした。スクールでは走る前に1時間を超える座学があるのだが、一番前に座ってアクビひとつせずに熱心にメモを録り続けていた。実技でも言ったことを正確にやろうとする。17歳だった当時の自分がここまでしっかりしていたかというと、あきらかに、トンチンカンだった。
基本はできるだけ早いウチに習っておいた方が良い、と強く思う。変なクセやスピードの魔力に取り憑かれたら、基本の重要性を軽く受け流してしまうのだから。
バイクレッスンを受けるなら、素直なことがイチバン良いのだが、まだまだバイクに乗り始めたばかりなので変なクセがついていないし、変なプライドもないし、だから彼女は目に見えるようにノウハウを吸収してくれる。
座学では心技体について、込み入ったお話をしたのだが、緊張したら「笑ってごまかしていいんだよ」と私が言ったことを覚えていて、実技中もずっと笑顔を絶やすことはなかった。
笑う時は息を吐く。特に上体に力を入れてから、脱力しつつ息を吐くと新気が取り込めるから脳がちゃんと働くし、体の緊張もとれる。緊張したままでは学習効率が悪いだけではなく、かえって危険ということも座学と実技でお伝えしているが、この点も彼女は実に素直だった。
難しい練習ではなく、簡単なことを正確に繰り返す中に上達のヒントが隠れていると伝えたが、上手くなってからライディングを楽しむのではなく、上達のプロセスそのものを楽しむ知恵が、この子にはあるのだと感心した。
彼女に自信が付いたのだろうか。講習後の笑顔がひときわ輝いて見えた。
本当に心から嬉しく思った。
※上記はバイク雑誌「風まかせ」2013年4月号:No.37 の連載コラムを加筆修正したものです。なお、同号にはホンダワークスが参戦したダカールラリー2013についての柏流独断レポート(アフリカも南米もラリーで走ってきた経験も踏まえての、ホンダへのエールです)も掲載しています。よろしければ、こちらも読んで下さい。
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