柏 秀樹 OFFICIAL BLOG
ヒデキの部屋
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ひとりごと…
シートは大事!
シートといえばレカロをイメージする人も多いだろう。クルマ用やオフィス用としてあまりにも有名だ。しかし、いくらレカロが良くても、ちゃんとした座り方をしないとまったく機能しない。いつもKRSのライディングスクールで受講生に説明している仙骨を立てる乗り方:いわゆる尾てい骨がついてる骨を立てるだけ:これが大切!あらゆるスポーツに共通して必要な脊椎S字の基本姿勢でもあり、あらゆるジャンルの一流といわれる方の姿勢は例外がないと言っていいほど仙骨が立っている。だから美しくも見える。逆に猫背(私はC型と呼んでいる)では体に負担が掛かり、余計な筋肉を使うので疲れやすいし、感じ取る能力も低下する。猫背ではアルマーニを着ても美しく見えないし、貧相になるだけ。ユニクロだって仙骨を立てると価格の10倍20倍あるいはそれ以上の価値に見えるだろうし、むしろちゃんとした脊椎S字の姿勢なら内面から輝いてくることだろう。
脊椎S字:仙骨を立てるのは背中を伸ばす姿勢と混同しやすいが、背中を伸ばすことではない。背中を伸ばすには力が必要。脊椎S字には力がいらない。私が言うのは仙骨を立てるだけ。これで脊椎がS字になる。美しい姿勢になる。わかりやすく言えば骨盤を立てると考えても良い。要は真横から見て脊椎が美しいS字を描く姿勢になればよいだけ。実に簡単。難しく考える必要はない。猫背は百害あって、メリットはない、と言い切れる。
で、バイクではクルマのようなバックレストがないのでイメージが湧かないかもしれないけど、ちゃんと真横から見て脊椎がS字になるように上体を作ること。その上で肩、ヒジ、手首があらゆるステアリング角度やスロットル操作量でもバランス良くとれるか。できるだけシンメトリックな状態でステアリング操作できるか、ということになる。S字のフォームにすると余計な筋力も使わないし、体に掛かる負担が減る。そして前後左右のバランス感覚が繊細に働く。実はGPライダーのフォームもS字で仙骨を基点にして前傾しているのだ。猫背で走るGPライダーもSXライダーも存在しない。いるとすれば選手生命は短いか、良い結果は残らないだろう。
では何故、バックレストのないバイクのシートがそこに関係するか。正しい上体を作るためには可能な限りお尻が痛くなってはならないのだ。痛いと集中力が低下するだけではなく、体を前後左右にずらすことになりがちで、すると体のどこかに負担が掛かっている状態ではますます疲れやすくなるというわけだ。お尻は上体の重さがもろにのしかかってくるところ。ヘルメットや風圧そして振動が加わるし、デイパックを背負えばさらに負担が大きくなるし、オフロードならますます大きな上下の振動で負担が増加する。
尻が痛いのは血流が悪くなるため。だからシートの面積は大きい方がいい。きちんとした形状とクッション性で面積が大きければそれだけ重力が分散される。そうすると痛くなりにくい。オフ車はシート幅が狭いのでどうしても大きなハンデがある。あるからこそ余計に優れた素材と構成(プロファイルも含む)でカバーするしかないということになる。
私のセローには野口装美製のスペシャルシートがセットされている。いつも私は野口シートと呼んでいる。表皮はバックスキン:いわゆるアルカンターラ製だ。このアルカンターラのしっとりするタッチは最高にいい。これを一度知ってしまうともう元に戻れないほど。サイドはシャープなイメージとなるシルバーレザーとして、内部には秘密の素材を何層にもわけて組み込んでいる。秘密というのは嘘で、内部構造はお任せという意味だ。野口さんは研究熱心で常に作り込みを進化させているのでお任せになってしまうともいえる。単純に減衰特性が高いものを入れるのではない。何層ものクッション材の組合せ順序、それぞれの厚さ、形状、そして表皮の材質、形状も関係する。少なくともセローのノーマルシートでは私の身長では低く過ぎるので余計に尻にかかる荷重が大きくなる。低いシートではヒザの曲がり角も大きくてロングランほどきつい。しかも林道などサッと立ち上がるときも高めのシートの方が腰の上下移動幅が少なくて済むのでラクチン。こうした理由でノーマルよりもシート高は30ミリアップしている。新しいインジェクション・セローに乗り換えたので今度はシート高を40ミリアップしてみようと思っている。
野口シートにしてから、高速道路、ワインディングロード、市街地、林道、獣道などいろいろ走った。セロー以外では今乗ってるタイガーもそうだし、かつてのXR600R(これは4台ほど乗り換えた)でもそうだった。私の場合は、リヤシートに荷物を置くとかリヤキャリアに荷物を載せるのはあまり好きではない。オンロードだけなら別にそれでも我慢できるが、林道走行ならやはり背中が重くても荷物を背負うので尻が痛くならないわけではないが、野口シートで快適性が大幅にアップしたことは事実だ。私は4度のパリダカのほかさまざまなオフロードを経験してきたが、2週間あるいは3週間(南米ラリー1万6千キロ)におよぶ過酷な走行でますますその信頼性の重要性を実感した。シートの信頼性とは何か。へたりのことだ。これが少ないということ。パリダカでは一日に千キロという日だってある。たった一日でへたるわけではないが、コシがなくなるものがやはりあるのだ。するとどうにもならない。へたったシートだとちょっと乗るのさえ苦痛になる。へたると自在に動けない状態になることもあるのでさらに楽しくない。優れたシートの第一基本要件はだから耐久性なのだ。この要件を満たしてこそ良いシートともいえる。へたったシートに乗るとへたになる、という駄洒落を言っている場合である!?
ともあれ、マフラーやサスの交換もいいけれど、体に直接触れるパーツを大切にすることはもっとも大事だ。良いものを尻に敷くこそが優先順位の最上位に来るべき。一方で、ブランドという幻想に酔うことを別の言い方で「尻に敷かれる」ともいう!?正しい乗り方の基本を理解し、ものを正しく使わないと結局、ライディングがわかっているとは言えないし、進化しない。速いだけのライディングではなく、進化し続けられる上手いライディングとは、正しく座ることからスタートする。だからシートは大切なのだ。写真は山梨の瑞垣山を背景にした野口シート装備のセロー改ちゃん(実はXT250X改)
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